Bloody's Tea Room
Team SPIRITS Web Master 「Bloody]の趣味の世界へようこそ

2018/02/18 15:32更新 

当ホームページは[Bloody]の完全なる自己満足の世界で成り立っております。
読者の皆さんも喫茶店感覚でお楽しみください

 

〜Story22〜

Rest Time

会社勤めをしていると、朝出社してから夕方退社するまでずっと屋内に籠ってしまうことが多い。特に製造業に勤務している場合は一度も外を見ることがないのもしばしばだ。時には晴れているのか雨が降っているのかもわからない。そんな籠りっきりの一日なんてつまらないと私は思う。

その日私は朝から資料と格闘していた。今日のうちに仕上げねばならない計画書が3通もあるのだ。事務所に籠ってひたすらパソコンの画面とにらみ合い、プリントアウトされた実績数値を見つめ、作業に没頭していた。事務所には窓があるが、パソコンを多用する昨今の事務所はブラインドを下ろしてしまうので外の景色は見えない。その日は朝からずっと霧が立ち込め、通勤途上も顔がしっとりと濡れるほどの霧だった。ブラインドの外は白い幻想的な世界が広がっているに違いない。
ふとチャイムの音が聞こえ、我に返るとあっという間に2時間が経過していた。私は両手を伸ばして後ろに体をそらし、ふっと息を吐いた。
「10時休憩だよ。ちょっとブレイクしたら?」
声をかけてきたのは同じ課の同僚だった。
「そうだな。ずっとパソコン見ていたら目がチカチカしてきたよ」
二人は事務所を出るとコーヒーの自販機がある休憩室に向かった。休憩室に入った途端、私は声を上げた。
「なんだよ、晴れてるじゃないか!」
同僚はびっくりしたような顔をして私をしげしげと見つめた。
「知らなかったのか?霧は1時間ほどで晴れて、今はいい天気だよ。青空が抜けるようだぞ。」
「そうなのか?会社についてからずっと没頭していたからなあ。なんだか狐につままれた気分だよ」
「だからブレイクしなきゃいけないんだよ。ずっと没頭していると世間に取り残されるぞ」
私たちはコーヒーを手に窓辺に近づいた。確かに抜けるような青空だ。仕事をしているのがばかばかしくなる。
「こんな日に籠って仕事なんかやってらんないよな。どこかに旅行にでも行きたい気分になってきたよ」
「確かに!このまま列車にでも乗って温泉で露天風呂ってのがいいなあ」
「そうそう。駅弁買ってビールでも飲みながら温泉に行けたら最高だな」
「でも・・・」
「お仕事お仕事!」
私たちはお互いに噴き出した。その時私は青空に浮かぶ雲に目をとめた。
「なあ、雲の動きが速いと思わないか?」
「確かに速いな。これは夕方にはまた天気が悪くなるかもしれないな」
「ってことはこの青空の間は仕事して、天気が悪くなってからプライベートタイムってことか?」
「悲しきサラリーマンだね〜」
「でもさ、ちょっと見てみてよ。山に雲が影を落としていてちょっと幻想的だと思わないか?」
「ホントだ!しかも雲の動きが速いから山がスクリーンみたいに見える」
「こういう景色を見ることができるだけでも幸せか?」
私たちは再び笑いあった。
「お、そろそろ休憩時間が終わるぞ」
一気にコーヒーを飲み干し私たちは休憩室を去ろうとした。
「あ・・・」
私は携帯電話を取出し、窓から見える山肌を画像におさめた。その時、休憩時間の終了を告げるチャイムが鳴った。

仕事に没頭して脇目も振らずに集中する。悪いことではない。でも人はどんなに忙しい仕事中でも休憩をとるべきだ。自分だけの世界に入り込み、周りが見えないような仕事の仕方ではいずれ見えるものも見えなくなる。ちょっとブレイクして自分の周りを見てみよう。そこには見落としていた何かがあるかもしれない。そして想像力をかき立てる世界が広がっているかもしれない。
ちょっと休憩・・・いいじゃないか。その心のゆとりがもっともっと仕事を充実させるはずだ。

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