Bloody's Tea Room
Team SPIRITS Web Master 「Bloody]の趣味の世界へようこそ

2018/02/18 15:32更新 

当ホームページは[Bloody]の完全なる自己満足の世界で成り立っております。
読者の皆さんも喫茶店感覚でお楽しみください

 

〜Story18〜

Autumn Parade

気圧の配置が西高東低になり、北からのシベリア寒気団が日本列島に流れ込みだすと、山は本格的な冬を迎える。
夏と冬のわずかな狭間に存在するひとときの自然の安らぎが生み出す紅の祭典。それが紅葉。
山の空気は澄み、空は高く、木々は最後の輝きを増し、やがて散り、冬の到来を待つ。
一年で一番空気の美味しい季節、彼らは毎年旅に出る。

今年の秋も彼らは一面の紅葉で覆われた東北の山並みに向かっていた。
美味しい空気を室内一杯に吸い込むかのように、ラテン車たちはみな窓を全開していた。
日本という国は四季折々の風景がすばらしい。
遠い欧州で生まれたこの車たちが、この美しい国の山並みを疾走する姿は、生まれがまったく異なることを微塵も感じさせないような絶妙なコントラストを見せる。
その各々のボディーにはラテン特有の派手な色彩がまとわれているが、その派手さも自然が演出する紅の美しさには太刀打ちできない。
そのボディーラインはまるで山に住む動物たちのように山の中に溶け込む。
1台で自然に太刀打ちしようなんて、大自然に対して恐れ多いじゃないか!

彼ら10数台の長蛇の隊列は色とりどりのボディーカラー、様々なボディーラインを個性的に演出し、個の魅力と群の魅力を兼ね備えたパレードとして山間を疾走していた。
・・・・・10数台でやっと自然と対等の存在感・・・・・
その色彩はまるでステンドグラスのように輝き、紅の世界に色の帯をつけてゆく。

700kmにも及ぶこの行程の中で、最後尾に位置していた彼はふと思った。
「毎年この自然に触れる仲間がいる」
何と幸せなことであろうか?
共通の趣味を持ち、共通の出来事に共感し、共通の自然を共有し・・・。
10数台の仲間たちがいる限り、いつでもこの自然の中に溶け込んでゆける。
そして様々な出会いと別れを繰り返し、いつしか仲間たちも増えてゆく。
時という名の筋書きのないドラマが毎年繰り広げられ、自然は毎年違った表情を見せ、その違いに毎年感動を覚える。
・・・・・来年もまた、こんなシーンが展開される・・・・・

長い人生にとって今日という日は一度しかこない。
長い人生にとって今年は一回しか来ない。
人生約70回の秋の到来の中で、この自然との共感を味わうことが出来る瞬間を何回経験することが出来たか?
それが彼にとっての幸せのバロメーター。
毎年の秋の行進がまた今年もやってくる・・・・・。

See You Next Autumn.

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