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〜Story4〜 ゆっくり歩こう
ふと海が見たくなった。梅雨前線が北に去り、都会に本格的な夏がやってくると、アスファルトからの照り返しと無機的な都会のビルは僕を疲れさせてしまう。毎日汗だくで過ごす日常から逃れるため、僕は電車で2時間ほどの時間をかけて海岸にやってきた。
海岸沿いを歩いていても真夏の日差しは容赦なく照り付ける。爽やかな海岸のイメージとは程遠い。汗が体中から噴き出し、シャツは絞れるほど濡れていた。 1時間ほど海岸線を歩いた僕は、腰を下ろせる石段を見つけて休憩することにした。腰を下ろしてバッグからタオルを取り出して汗をぬぐう。あっという間にタオルは水分で重くなった。僕の息遣いも荒い。しばらくの間、僕は全身の汗をぬぐうことに集中した。
ふと、風を感じて顔を上げた。そういえばさっきから新たに汗が噴き出してくることがなくなった。そこで初めて波の音が聞こえた。打ち寄せる波、海水浴をする人たちの歓声、今まで聞こえていなかった音が聞こえてきた。そして東から西へ緩やかに風が流れている。
ぼうっと海を眺めている僕の視線の向こうに江ノ島が見えた。入り江になっているここよりも、島の先端ならばさらに気持ちいいはずだ。そう思った僕はすぐに行動開始しようと腰を上げた。立った途端にまた汗が噴き出してきた。 |