Bloody's Tea Room
Team SPIRITS Web Master 「Bloody]の趣味の世界へようこそ

2018/02/18 15:32更新 

当ホームページは[Bloody]の完全なる自己満足の世界で成り立っております。
読者の皆さんも喫茶店感覚でお楽しみください

 

〜Story5〜

静けさの楽しみ方

朝の静けさが好きだ。
早朝、誰もいない街中や海岸に身を置いていると、時間が静止したかのような感覚に満たされる。まるで生きていることを忘れたかのような無音の世界、様々な世間の喧騒から切り離されたような感覚。
しかし、早朝のそんな時間はあっという間に過ぎ去ってしまう。日の出から1時間もすると人々が動きだし、その動きと共に静けさはどんどん失われて行ってしまう。

早朝の都会の静けさが喧騒へと変わってゆく頃、僕は人々の流れに逆らって街から離れた方へ歩き出した。駅へ向かってゆく人々は足早に僕の傍らを通り過ぎる。僕はゆっくりと彼らと逆に歩を進めた。
しばらく歩くと大きな鳥居が眼前に現れた。鳥居をくぐり、石段を上がると、広い参道が姿を現す。朝日が木々の影を作り、ひんやりとした空気に包まれている。
その境内に足を踏み入れた瞬間、早朝の静けさが再び蘇ってくる。人々の足音も、車のエンジン音も聞こえない。いや、聞こえているのだが心の耳が聞いていないというべきか。
この静けさに身を置いていると、心の中が洗われたような感覚になるのが不思議だ。1分1秒の時間が永遠のようにも感じるし、1時間が一瞬のように感じる。

昔の人々が寺社仏閣を重んじたのは、この凛とした静けさを求めていたからかもしれない。世俗から離れ、自分自身だけを見つめるようなこの空気が必要だったから。そして自分を律する環境が欲しかったから。

僕は本堂に向かって境内を歩いた。ことさらゆっくりと。そして足音を立てないように。息遣いさえも止めてしまいたくなるこの静けさを壊したくなかったから。そしてこの時間を楽しみたかったから。
 

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