当ホームページは[Bloody]の完全なる自己満足の世界で成り立っております。 |
〜Story5〜 静けさの楽しみ方
朝の静けさが好きだ。
早朝の都会の静けさが喧騒へと変わってゆく頃、僕は人々の流れに逆らって街から離れた方へ歩き出した。駅へ向かってゆく人々は足早に僕の傍らを通り過ぎる。僕はゆっくりと彼らと逆に歩を進めた。 昔の人々が寺社仏閣を重んじたのは、この凛とした静けさを求めていたからかもしれない。世俗から離れ、自分自身だけを見つめるようなこの空気が必要だったから。そして自分を律する環境が欲しかったから。
僕は本堂に向かって境内を歩いた。ことさらゆっくりと。そして足音を立てないように。息遣いさえも止めてしまいたくなるこの静けさを壊したくなかったから。そしてこの時間を楽しみたかったから。 |