Bloody's Tea Room
Team SPIRITS Web Master 「Bloody]の趣味の世界へようこそ

2018/02/18 15:32更新 

当ホームページは[Bloody]の完全なる自己満足の世界で成り立っております。
読者の皆さんも喫茶店感覚でお楽しみください

 

〜Story6〜

ささやかなる贅沢

1つ仕事を片付けた。かなり難易度の高い仕事だ。僕にしかできない仕事だったかもしれない。でも一般的に考えれば仕事を終わらせるのは当たり前のこと。別に他人にほめられるようなものではない。

その日、僕は帰りがけに精肉店に寄った。なんとなく「特売」の文字につられたということもある。
「サイコロステーキ用牛中落ち半額」
そうだ、今日は1人でお祝いをしよう。人に褒められるようなことではないが、自分で自分を褒めたっていいじゃないか。
精肉店で牛肉を250g買い込んだ。おあつらえ向きに隣が酒屋だった。酒屋へ立ち寄ると缶ビールを数本買いこんだ。

自宅に帰った僕は早速準備を始めた。ホットプレートをテーブルに出し、電源を入れた。ホットプレートが温まるまでの間に僕は缶ビールのプルトップを開け、一人で乾杯した。喉が渇いていたせいか、缶ビールはあっという間に空になった。
そして2本目の缶ビールのプルトップを引くころ、ホットプレートが適温になった。
僕はステーキソースを2種類用意した。醤油味と塩味。そしてホットプレートに2つ、肉の塊を乗せた。程よく脂の乗った牛肉は、ホットプレートの上で色を変えながら油をしみださせてくる。ジュージューという音と香りがビールの味を引き立たせる。
表面が焼き上がったところで一つは醤油味、一つは塩味のソースに浸して食べる。なかなかの味だ。2種類用意したのは正解だった。

僕はこうしてサイコロステーキを2つづつ、ゆっくりと焼き上げて味わって食べた。ステーキソースに浮かんでくる脂がテラテラと光り、それがまた食欲をそそる。そして喉の渇きはビールで満たされる。
肉を焼いている時に僕はあることを発見した。肉の1面を一気に焼いてしまうよりも、最初に6面全てに火を通したほうが脂の染みだしが少ない。試しに1面づつ焼いたものと6面全てを軽く焼いてからさらに焼き上げたものを比較して食べてみると、口に入れたときの食感さえも全然違う。この発見に僕は思わず笑みを漏らした。なかなか面白い。
普段ならば10分ほどで食べ終わってしまう夕食。今日は最後のステーキを口に放り込むまで1時間半ほどかかった。食べ終わった僕の胃袋は満足で膨れていた。そして何よりも僕の心が満たされていた。
こんなささやかな贅沢は1人で楽しむのがいい。

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