Bloody's Tea Room
Team SPIRITS Web Master 「Bloody]の趣味の世界へようこそ

2018/02/18 15:32更新 

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〜Story7〜

その本の読み方

日曜日の朝、珍しく早起きした僕はモーニングコーヒーを飲みながらこの真夏の一日をどう過ごそうか考えていた。まだ日が出て間もないというのに既に気温は27℃に達していた。
ふと思い立って僕はコーヒーを左手に持ちながら本棚を開けた。この真夏の日にふさわしい本を探すために。本棚には過去30年以上にわたって買い求めた文庫本が500冊ほどある。よくもまあこんなに買ったものだと思い、僕は1人で苦笑した。
棚の一角に赤い背表紙の文庫本の一群があった。学生のころによく読んだ片岡義男。30冊以上はあるだろうか。携帯電話もメールも存在しない世界での若者たちの生き方、人生の楽しみ方が凝縮されている小説を思い出した僕は、「メイン・テーマ」を取り出した。12冊のシリーズものになる予定で3冊しか出版されなかったこの小説を読み返してみたいと思った。
僕はコーヒーを一気に飲み干し、マグカップを棚に置くとメイン・テーマ3冊を取り出した。ぱらぱらとめくっただけでそのシーンが目に浮かぶ。
「そうだ、今日は本を読もう」
右手にマグカップ、左手に3冊の文庫本を抱え、リビングソファに腰を下ろした。第1話の最初のページを読んだときにふと思った。
「何かが違う」
冷房の効いた部屋の中でこの行動的な小説を読むべきなのだろうか?答えはNo。しかもコーヒーは既にない。
僕は急いでマグカップを片付けると、デイバックに3冊の「メイン・テーマ」を放り込み、身支度を整えた。

海に向かう普通列車は早朝と言うことで空いていた。しかし、あえて僕はグリーン車を選ぶ。なぜならこの本に通勤電車はふさわしくないから。この本の持つゆったりとした空気を同じ空間に身を置きたいから。
思った通りグリーン車にはほとんど乗客がなく、2階建て車両の2階から眺める東京のビル群も心なしかいつもと違って見える。
このまま海岸線の駅までゆったりと本を読み、そして駅を降りてから海岸まで行く。潮風に吹かれながら「メイン・テーマ」を3冊全部読み終える。そんな休日の過ごし方を思いついた僕は心の中で自分に拍手した。
 

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