Bloody's Tea Room
Team SPIRITS Web Master 「Bloody]の趣味の世界へようこそ

2018/02/18 15:32更新 

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〜Story25〜

Nostalgic

100年以上の歳月を超えた建造物。
誕生当時は無機的であったはずのこの人工の構造物も、歴史と言う名のもとに新たな顔を見せる。
この建造物が建築された頃、建築という人間が手に入れた技術は、レンガを積み上げるという工法しかなかったに違いない。
それは時代が求めた必然。まさに生まれるべくして生まれた時代の遺産。
100年の歳月を経た今、その当時の工法は旧態依然となり、すでに時代はその工法を見捨てた。
技術と言う名のもとに革新的な工法が出現し、人々はその工法を忘れた。
大規模な工作機械が超高層のビルディングを建造し、人々は手で図面を引くことなく、コンピューターにその作業をゆだねた。
人々の手はレンガを積み上げることなく、重機のレバーを握る。

そんな現代に生まれたこのマシンも、100年の歳月を経ることが出来るのであろうか?
現代の技術の結集であるこのマシンも、10年の歳月を経たときにはすでに技術的には見る影もなく、その存在だけは歴史に名を連ねる。
最新技術はすばらしい。より速く、より安全に、より環境に優しく、より人々に優しい。
それは何かと引き換えに得られるもの。
そう、それは[よき時代]という時を失うこと。
人々が創造するものは、時代を経ても色褪せない何かがそこにある。
建造物もマシンも同じ。

彼は自分のマシンをいとおしいと思う。
それは自分の生きた時代に生まれた技術によってその名を歴史に刻んでいるから。
このマシンを所有する喜びは時空の中で存在し、永遠に存在は記憶に残るものであるから。

100年を越えた建造物が人々にもてはやされるのはなぜか?
その時代を現代に語り継ぐ生き証人だからではないだろうか?
そして彼もまたいつかは生命の火が消える時が来る。
しかし人々の創造したものは、人々によって守られ、複数の同じ志の人々が受け継ぎ、語り継いでゆくことが出来る。
朽ち果ててしまう有機生命体と違う永遠の美がそこにある。

人は言う
[ものを大切にしなさい]

そう、技術の粋を集めた作品も、粗末に扱うとすぐになくなってしまう。
大量消費のこの現代で、語り継ぐべきモノを所有している喜びを感じることの幸せは、所有したものにしかわからない。
消えてなくなることも出来るが、大切にすることで彼は永遠にこの歴史を所有したいと思う。
それは愛する人に対して永遠の愛を誓う気持ちに似ていた。

100年の歴史を持つ建造物、10年の歴史を持つマシン。
人々の生命に比べたら3世代の差を持つこの創造物の対比は何故か見事に調和し、時空を超えた再開を果たす。
その対比を見る彼の心に静かななごみが存在していた。
[大切なものはありますか?]

彼にとって大切なこの時間、朝日がその対比を照らす。
彼はふとマシンに語りかける
[この朝日をいつまでも見させてあげよう]
 

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