Bloody's Tea Room
Team SPIRITS Web Master 「Bloody]の趣味の世界へようこそ

2018/02/18 15:32更新 

当ホームページは[Bloody]の完全なる自己満足の世界で成り立っております。
読者の皆さんも喫茶店感覚でお楽しみください

 

〜Story2〜

Morning Highway

冬の夜明けは遅い。
街が目覚め、人々が動き、そして夜明けがやってくる。
その日、彼は友人と共に早朝の高速道路にいた。
ヘッドライトを点し、闇の中を疾走する2台のイタリアンマシンの咆哮は、やがてやってくる朝の光を求めて東へと突き進んでゆく。
無機質な防音壁にこだまするマシンの息遣いは荒く、まるで周囲の存在を忘れたかのように彼方へと去ってゆく。
やがて夜明けの光が前方にきらめき、世界が徐々に色づいてゆく。アスファルトはヘッドライトを照り返す世界から、朝日を照り返すシーンへと変貌して行く。
2台のイタリアンマシンを操る彼と友人もまた、その光の世界の変貌に呼応しさらに加速を強めてゆく。

マシンの咆哮のみがこだまする室内にトランシーバーの声が響く。
「もうすぐ合流地点だ」
友人からの呼びかけに対して彼はゆっくりと反応した。
「了解。時間通りだ」
この日、彼らにとってこのマシンを通じて出会った様々な人々との交流会が控えていた。
間違いなくこのイベントの主役はマシンであった。彼らはそのマシンのオーナーでありながら自らが脇役であることを理解していた。
そして、彼らの持つデジタルカメラもまた、被写体として主役であるマシンのために存在していた。

太陽が昇り始める空と共に、高速道路上も車の数が徐々に増えてゆく。
車の隊列を走行車線に見ながら、彼らのマシンは追い越し車線を疾走する。
ふと、彼の目はバックミラーに写る友人のマシンを捕らえた。
超高速で走行してゆくCOUPE FIATのヘッドライトは、もはや「マシン」というより芸術的な生命体を思わせる美しさがある。
・・・車は疾走している時が一番美しい・・・

やがて仲間との合流地点であるパーキングエリアが近づく頃、シャッターチャンスはやってくる。
彼は友人に伝えた。
「もう少し右に寄れるか?」
友人は答えた。
「了解」
彼らの阿吽の呼吸は一朝一夕のものではない。
イタリアンマシンオーナー同士の共通の心がなければ成り立たない。
彼らの会話は一瞬にしてお互いの立場を理解し、相手の意向を察知する
サイドウインドウを開け、カメラを突き出して後方に向ける。風圧に耐えながらブラインドシャッターを切った時、ストロボが光った。
奇しくも彼のマシンはストロボに浮かび上がり、友人のマシンは朝もやの中に浮かび上がる。
ヘッドライトと朝日、そしてストロボの織り成す光の3重奏は、高速道路上の非日常的な速度域で結びつき、その一瞬を完璧なまでに一枚の写真が記憶した。

彼は思った。
「一日の始まりにふさわしい」
彼らにとって日常を離れたスイッチのような一瞬がそこには存在した。

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