Bloody's Tea Room
Team SPIRITS Web Master 「Bloody]の趣味の世界へようこそ

2018/02/18 15:32更新 

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読者の皆さんも喫茶店感覚でお楽しみください

 

〜Story31〜

You're Sorry

「You're sorry, I'm sorry」という言葉を知っているかい?
映画[Mission impossible2]で使われる有名な諺。日本語で言えば・・・そう「ままならぬ世の中だ」とでも訳すだろうか?

夕焼けに浮かぶこの街を見ながら、彼はこの諺を思い出していた。
彼は自分の住む街から約300km離れたこの街に仕事のためにやってきた。
明日の朝一番で大きな商談がある。彼が来なくてはならない必然がここにあった。
彼は自分の仕事には満足している。基本的に物事を論理立てて進めて行く彼の性分は、商談を進める上でも大変役立っている。多分明日の商談もまったく問題なく進めることができる確信があった。
そしてこの出張で彼の仕事における地位も確固となることであろう。
今の仕事について15年。ずっと必死に頑張って来た。今まで出張に行くことも、家に帰らないことも、休日に出勤することも特に気にしない性分だった。

しかし、今日の彼の心は晴れなかった。
ホテルの最上階のバーで美しい夕焼けの街を見ていても。
完璧ともいえるバーテンダーの手付きを見ていても。

今日は彼の誕生日。おそらく自分の住む街にいれば、最愛の女性が彼の誕生日を祝ってくれたに違いない。
「1年でたった1度のこの日に、よりもよって出張とは。ついてないな」
彼は独り言をポツリと漏らした。
昨年まではこんなことは考えもしなかった。自分の誕生日を祝ってもらうことを望むなど、自分にはありえないことだ。
これが幸せを感じるということなのか?
なかなかうまく行かない世の中だ。
・・・You're sorry, I'm sorry・・・・

夕闇が迫る頃、彼の携帯電話が鳴った。携帯の画面には彼女の名前が浮かんでいる。
「はい」
「何をしていたの?」
「暇だからホテルのバーで夕焼けを見ていたよ」
「お誕生日ね」
「そう、一つ歳をとった自分に乾杯」
「1人の時間を邪魔してしまったかしら」
「君なら大歓迎だ」
「じゃあ、もっと邪魔してしまおうかな」
「部屋に戻るよ。そのほうがゆっくり話せる」
「分かったわ。その前にちょっと振り向いてみてくれる?」
彼はゆっくりと振り向いた。
そこには携帯電話を耳に当てた彼女がいたずらっぽい顔をして立っていた。
「ご一緒してもいいかしら?」
彼は携帯電話に向かってこう言った
「今、ちょっと魅力的な女性にナンパされてしまった。もう少しバーに残るよ]
「浮気するの?」
「そう、この街でも僕を見捨てない女性はいるらしい」
彼女はゆっくりと彼の隣についた。
「部屋に帰るんじゃなかったの?]
「なかなか人生は思い通りに行かないものだ。You're sorry, I'm sorryだよ]
「なにそれ?」
「ままならぬ世の中さ」
2人は彼の誕生日に乾杯した。彼女はつぶやいた。
[You need me. And I need you. It's not sorry.]

人生思い通りに行かない時もなかなか面白い・・・・
人生はだから楽しい。

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