Bloody's Tea Room
Team SPIRITS Web Master 「Bloody]の趣味の世界へようこそ

2018/02/18 15:32更新 

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〜Story35〜

The Sky is Crying

旅立ちの日、人々はセンチメンタルになる。
旅人の心はどことなく不安になり、行く先々での前途を案じ、旅先での出来事に対する期待と不安で包まれる。
まして雨の日の旅立ちは旅人の心をどことなく不安にさせる。
薄暗い日、そのたびの先には何が待ち受けているのか?ネガの要素が彼らを包み、皆旅立ちを躊躇する。これが人の心の心理。

彼は国際空港のロビーで一人ぽつんと座っていた。
彼の搭乗すべき飛行機は彼の前で出発整備を受けている。
荷物の積み込み、客室乗務員の搭乗、機体の清掃。その一連の作業をじっと見つめていた。
窓には秋雨特有の強弱を伴った水滴が間断なく降り注ぎ、視界をぼやけさせていた。
まさに雨の日に旅立つ旅人の心境に彼はいた。
見送りもなく、ただただ1人旅立つ彼は孤独を感じていた。
「テレビドラマなら旅立ちはすばらしい演出があったりするのにな」
馬鹿げた考えだと思いながらも彼は少しだけテレビドラマの主人公になりきってみたかった。

今回の旅は長いものになるであろう。
行く先で起こる出来事は予想しがたく、彼の経験を持ってしても簡単に片付くことはない。
従って彼はオープンチケットでの今回の出発に大きな不安を抱いていた。そして同時に降りしきる雨が彼の心をネガティブに変えていた。

搭乗開始となる10分前、彼は携帯電話から一本のメールを彼女に送った
「これから搭乗するよ。帰ってくるのはいつになるかわからない。雨の日の出発は心が滅入る。会いたい気持ちで一杯だ」
仕事をしているであろう彼女が返信することは望めない。彼は携帯電話の電源を切った。

搭乗が開始され、窓際の座席に落ち着いた彼は、隣の乗客が携帯電話で一本のメールを打って電源を切った一連の動作を見ていた。
「出発まではまだ時間がある。最後にメールチェックする賭けをしてみても悪くない」
彼はそう思って急いで携帯電話の電源を入れた。
するとまもなくバイブレーターが着信をコールし、メール受信のサインが点灯した。
メールボックスを開くと、彼女の微笑みに満ちた画像が現れた。
「私は今、こんなに微笑んでいるけど、心の中は土砂降りの雨よ。私が泣く事が出来ない分、空が泣いてくれているの。空が泣いていてくれるから、私はあなたに元気が出る笑顔をプレゼントするわ。行ってらっしゃい]
彼はゆっくりと濡れた窓を見つめ、一言つぶやいた
「こっちが泣いてしまうじゃないか」
彼は急いで返信した。
「バカヤロウ、ちゃんと仕事しろ。でも・・・ありがとう、行ってくる」
送信を終了するとゆっくりと電源を切った。
電源を切ると同時に機体はゆっくりとゲートを離れた。

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