Bloody's Tea Room
Team SPIRITS Web Master 「Bloody]の趣味の世界へようこそ

2018/02/18 15:32更新 

当ホームページは[Bloody]の完全なる自己満足の世界で成り立っております。
読者の皆さんも喫茶店感覚でお楽しみください

 

〜Story3〜

Sky Blue

人は日常を脱するための手段をいくつか持っている。趣味、食事、旅、スポーツ・・・・
心の贅沢、心の満足、心の安らぎ。全ては心を癒すためにそれらの行為は行われる。
しかし、行動全てが満足に結びつかない場合もある。人が望むことが全てかなうならば、この世にストレスと言う言葉は誕生しなかったに違いない。

彼の場合、日常を脱出するためのパートナーはAlfa Romeoであった。
体の疲れを癒し、熟睡した彼は真っ暗な早朝ふと目覚めた。
「たまには遠出でもしようか」
誰にともなくつぶやいた彼は、夜明けの街をAlfaと共に旅立っていった。
西へ。もっと西へ。行く当てのない1台だけのツーリング。
西に向かった理由は簡単だ。東に向かえば間違いなく朝日をまともに浴びることになる。
そうなれば視界が日光にさえぎられ、快感は得にくいものになるはずだ。
日本の大動脈であるこの高速道路を疾走しながら、徐々に空が白み始めるのを彼は感じていた。
闇が途切れて街の姿が露になってゆく。やがてミラーにオレンジ色の光が差し込んでくる。
それは果てしなく青く、日差しはまぶしい。快晴だ。

50kmほどの距離を30分ほどで走りぬけ、街から山へ景色が変貌する頃、彼の眼前にはすばらしい光景が展開しようとしていた。
朝の日差しに浮かぶ霊峰富士は、彼の心を引き付けるに十分であった。行き先は決まった。
都会から70kmほどのインターで降り、ワインディングロードを駆け上がる。
東の空はオレンジ色から白い光に変貌し、街を見下ろす高台からは昨夜の名残である靄がうっすらと消えてゆく様が展開される。

頂上でAlfaを停車させた彼は、雲ひとつない空に浮かぶ霊峰を見て満足した。
「今日は1年間で一番」
霊峰富士はその圧倒的な存在感で世界に君臨していた。
富士の標高を考えれば、頂上に「かさ雲」と呼ばれる雲で覆われているのが常だ。
今日の富士はそのかさ雲もなく、まさに子供の絵本に出てくる「富士」そのものだった。

大いに満足した彼はジャケットから[Rothmans]を1本抜き出し、ジッポで火をつける。
すばらしい自然の中に最愛のAlfaを導くことの出来た満足感、充実感は何事にも変えがたい。
タバコ、富士、Alfaが織り成すこのひとときは、彼から日常を忘れさせるに充分だった。
そして日差しがさらに高くなるころ、彼は愛車Alfaのエンジンを目覚めさせる。
「この日の朝のことを、空の色と共に永遠に覚えておこう」

もはや朝の色は全て消え去り、そこには快晴の青い空がいっぱいに広がっていた。
これぞ[Sky Blue」と言うべき色で彩られて・・・・・

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