〜Story4〜
Twilight
Photo by Mr.Suezou (Special thanks)
寒冷前線が北へ退避した冬の日は、穏やかな日差しと春を思わせる風に包まれる。
仲間たちはこの貴重な一日に集う。
朝、街の喧騒を脱出した18台の芸術品は、400kmの旅路を経て最終目的地に再び集う。
彼らを一日見守ってきた太陽がその最後の炎を注ぐ時、彼らもまた一日のエネルギーの全てを放出せんとばかりに最後の輝きを見せる。
・・・聖者の行進・・・
ラテンの芸術魂が生んだこの機能美、造形美に、ある者はため息で、ある者は感嘆の声で行進を見つめる。
その芸術品の飼い主たちもまた、仲間の愛機に嫉妬と羨望を持って熱い眼差しを向ける。
ツーリングと言う名の贅沢な遊びをする大人たちは、この日は無邪気な子供に帰る。
彼らはもしかしたら街では「オジサン」と言われているかもしれない。
仕事では[上司]として部下を取りまとめているかもしれない。
家庭では[いいお父さん]かもしれない。
そんな日常の殻を破って、この日だけは全て自分のために、全て愛機のために、そして仲間との交流のために全力で[遊ぶ]大人たちになる。
この一瞬は彼らにとって[夢]なのかもしれない。
[夢]の中で自己陶酔することで、自分が物語の主役として君臨する。
見識ある者はこの行為を[子供]と表現する。
[子供]?大いに結構ではないか。男とは永遠に子供なのだ。
そしてこの子供たちはクルマという芸術品を大切なおもちゃのように愛し、時には疾走させ、時には手入れをし、時には磨き上げる。
そろそろ[夢]の時間も終わりに近づいてきたようだ。
西の空が赤く輝きを増してゆき、聖者の行進は最高潮を向かえ、あたかも太陽に敬礼をするかのごとく整列する。
・・・トワイライト・・・
今日と言う日を惜しみながら・・・。夢の時間を振り返りながら・・・。
世界が完全に闇に包まれる頃、一台、また一台と現実の世界に戻ってゆく。
街の喧騒に向けて。生活と言う名の現実に向けて・・。
彼らは次の[夢]の時間を心の支えに日常に戻ってゆく。
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