Bloody's Tea Room
Team SPIRITS Web Master 「Bloody]の趣味の世界へようこそ

2018/02/18 15:32更新 

当ホームページは[Bloody]の完全なる自己満足の世界で成り立っております。
読者の皆さんも喫茶店感覚でお楽しみください

 

〜Story2〜

Near Each Heart

クリスマスイブ、午後8時。ほどなくするとデザートがやってくる。クリスマスのディナー、洒落たイタリアンレストランでのひとときは、カクテルとキャンドルが雰囲気を演出している。
彼らの会話もこの雰囲気の中で大いに盛り上がり、時間の経過と共にその会話の深さを増していた。
彼らは周囲から見ると恋人同士のように見えるかもしれない。もちろん彼らはその周囲の反応も意識はしている。但し、悲しいことに彼らは恋人同士ではない。
[とても気の合う友達]
そんな表現がぴったりだ。
デザートが出てくる頃には、ちょっと多めに杯を重ねたカクテルの影響か、2人ともちょっとほろ酔い気分になっていた。

[そろそろ出ようか」
彼が提案し、彼女も従った。店の外は12月の寒気が肌を刺し、マフラーとコートなしではいられない。
[さて、酔い覚ましにちょっと歩かないか?]
[いいよ]

クリスマスイブの街は華やかだ。
至る所にイルミネーションが飾られ、街を行き交う人々もなんとなく笑顔が多い。
もちろん恋人たちは寄り添い、子供たちははしゃぎまわり、ケーキを提げた会社帰りのサラリーマンさえも心なしか穏やかな表情をしている。
彼らはそんなクリスマスイブの街を肩を並べて歩いた。そう、ただ肩を並べて。

「わぁ!]
突然彼女が声を上げた。彼の傍らから彼女が駆け出して行き、彼も慌てて後を追った。
彼女が目指していたのは公園にあるイルミネーション。
サックスを形どったオブジェにイルミネーションが施され、幻想的な景観を演出していた。
彼らはしばらく声も出さずにそのオブジェに目を奪われた。
やがてどちらともなく手が触れ合い、やがてしっかりと握り締めた。
とても冷えた空気の中で、お互いの手のぬくもりが暖かい。お互いが必要としていたぬくもりがここにある。言葉は何も要らない。ただただしっかりと握り締めた手が気持ちを伝えあっていた。

彼は彼女をそっと見た。
彼女は視線に気がついてちょっと照れくさそうに彼を見た。
[行こうか]
どちらともなくオブジェの傍らから離れ、今度はしっかりと寄り添って歩き出した。
[今日はちょっと心が近づいたのかな?」
彼は照れくさそうにつぶやいた。
彼女は悪戯っ子のように目を見つめてこう答えた。
[さて、どうかな?]
つないだ手にわずかに力を込めながら・・・。

ふとした瞬間を大事にしよう。
心の触れ合いを見逃すことなく生きてゆこう。
大事なことは必ず言葉ではなく伝わってくる。
気がつかないうちに避けている事ってありませんか?
本当に大事な人、大事な事、見逃してませんか?
心が最も接近している時、それは一番大事にしなければいけない時間。
そんなこと、人生で何度も経験できるわけではない。
すれ違わないようにしっかりとつかもう。お互いに。

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