Bloody's Tea Room
Team SPIRITS Web Master 「Bloody]の趣味の世界へようこそ

2018/02/18 15:32更新 

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〜Story5〜

Letter

彼は情熱の限り、自分のありったけの感情をぶつけてペンを走らせた。
手紙と書くのは何年ぶりだろう。10年ぶり?それ以上?
現代には便利なものがたくさんある。電話、メール、携帯電話・・・
瞬時に相手に自分の心を伝えるツールがたくさんある。
では、なぜそのツールを彼は使わないのか?
自分の心の深さを伝えるには、文明の利器はあまりにも軽すぎる。
便利で、リアルタイムで、時間の共有が出来るツールには深さがない。
原始的に、そして太古の時代から人の想いを遠くに伝えることの出来るツールは手紙だけだ。
そして手紙はそれを書く時間、届ける時間、全てが深い。
一時の感情に流されることはなく、じっくりと時間をかけて想いが伝わる素晴らしい手段。

彼の心の中には彼女に対する深い想いが満ち溢れていた。
そう、彼は10数年ぶりにラブレターを書いている。
彼の想いは彼女に伝えてある。電話でも、メールでも、会っていても。
でも追えば追うほど彼女の心は離れてゆく。
彼は自分を吹っ切るためにペンを取った。
[これでダメならあきらめよう」

自分の想いを文章にぶつけ、彼はペンを置いた。
きれいに折りたたんで封筒にしまい、しっかりと封をした。
あとはポストに投函するだけ。
彼の想いは彼女に届く。数日の時間を使って。
ポストに投函する時に彼の心は決まっている。
もう迷うことはない。
そして数日後に彼女が答えを出す。
時間と空間を越えて結論が出る。
深い想いが伝わった時に彼女に選択の時がやってくる。
そんなことを考えながら、彼は一気にコーヒーを飲み干した。

時には手紙を書こう。
必ず直筆で書こう。
メールは軽すぎる。
電話では感情的になりすぎる。
ワープロの文字は心が通わない。
一生懸命に自分の手を使って心を伝えよう。
原始的手段が最も人の心を通わせる。
手紙は素晴らしい。

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