Bloody's Tea Room
Team SPIRITS Web Master 「Bloody]の趣味の世界へようこそ

2018/02/18 15:32更新 

当ホームページは[Bloody]の完全なる自己満足の世界で成り立っております。
読者の皆さんも喫茶店感覚でお楽しみください

 

〜Story6〜

A Cup of Coffee

話をするというのは難しいものだ。
自分の感情のままに話してしまえば相手を傷つける場合もある。
感情を隠してしまえば真意は伝わらない。
相手を思いやることと主張しないことは違う。
思い切って自分の心を打ち明け、さらに相手の気持ちも思いやる。
それが真の会話と言えるのではないだろうか?

彼と彼女、お互いに悩んでいた。彼らの気持ち、そのままぶつけると喧嘩になる。
心の奥にあるブレーキを解き放たない限り、相手に真意は伝わらない。
行きつけのレストランバーで彼らは真剣に話をしていた。
そう、二人の将来のこと。このままでいいのか?ということ。
但し、どこかに心のブレーキをかけながら・・・。

「君の考えていることはわかる。感情のままに生きてしまっては単なる子供であることもわかる。でも、それは僕の生き方だから仕方ない」
「あなたの言いたいことはわかる。人間誰でも決断の時があると言うことを。簡単に決められない私のことももわかってほしい」
「わかっているつもりだよ。もう少し気を楽にしたほうがいいと思う。時間が解決することもある」
「あなたは何でそんなに楽観的なの?何でそんなに自信があるの?私はくよくよ考えすぎなの?」
「自分に自信を持たないと自分のこと好きになれないよ。逆に自分のことが好きだから自信が持てる」
「私は自分に自信がないから・・・」
「別に僕と同じにならなくてもいいんだ。自分を信じること。それだけだ。明日何が起こるかわからない。巨大地震で死んじゃうかもしれない。そんなこと考えながら生きていたら何もできはしない。だから毎日を精一杯生きることが大切だ。石橋を叩いて渡ることは重要かもしれないが、爆破して壊してしまっては何にもならない」
「・・・・」
「だから無理に決めたり、無理に押し殺す必要はないんだ。自分の気持ちが勝手に変わって行くはずだ。思い悩むことはないんだ 。結論なんてものは考えるよりも先に感覚として現れてくるはずなんだ」
彼女は反芻するように自分の指先を見つめていた。まるで指先が何かを語り合っているように、左右の手の指を合わせていた。
やがて彼女は顔を上げると彼にこう提案した。
「コーヒー飲みに行こう」

熱いコーヒーはほろ酔いの彼らに心地よい刺激を与えてくれた。
彼らの表情も心なしか穏やかになり、ついさっきまでの堂々巡りの会話がうそのように感じられた。
「私、うじうじしている自分がいやになった。でも、考えることよりも素直になることが大切なんだってわかった気がする」
「僕も結果を求めすぎて焦っていたような気がする。自分の信じたことを信じる。そういう気持ちが重要だって気がついた」
「長い人生、何が起こるかわからないし」
「明日は明日の風が吹く・・・さ」
二人は顔を見合わせて吹き出した。
「あなたって本当に楽観的なんだから!でも、なんだか心が温まった気がする。氷が解けてゆくような感じ」
彼女は微笑みながらこう言った。
「今まで何を悩んでいたんだろうって。こんな素直な気持ちになれるなんて」
彼はいたずらっ子のようにニヤリと笑ってこう言った。
「僕だってなんだか包まれるような気がした。君の表情がとても優しいから」
二人はじっと相手の目を見つめた。表情は穏やかに微笑んで、目は心の奥を見つめていた。
「コーヒーっていいよね」
「うん。もう一杯飲む?」

自分に冷静になれないときがある
何もかもが堂々巡りのときもある
いくらあがいても脱出できないトンネルがある
そんな時にコーヒーをゆっくり飲んでみよう
コーヒーを飲みながら会話する
そういう穏やかな時間が人には重要だ
そんな時間の積み重ねが人の年輪を刻む
一生に何回こういう時間が持てるのか?
それは自分次第
コーヒーがその時間を助けてくれる

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