Bloody's Tea Room
Team SPIRITS Web Master 「Bloody]の趣味の世界へようこそ

2018/02/18 15:32更新 

当ホームページは[Bloody]の完全なる自己満足の世界で成り立っております。
読者の皆さんも喫茶店感覚でお楽しみください

 

〜Story9〜

Infinity

人はみな、自分のことは自分が一番良く知っていると思っている。
もちろんその考え方も間違いではない。
でも、自分が気づいていない自分の良さ、自分の魅力、そういったものは人が気づかせてくれるということもあるのではないだろうか。
そしてそんな自分の魅力を教えてくれた人こそ、真に出会ってよかったと思える人なのではないだろうか。

彼は彼女に向かって問いかけた。
[何でそんなにやさしい表情で笑うことができるの?]
彼女はこう答えた。
[え?私の表情なんてそんなに誇れるものじゃない。恥ずかしいわよ]
彼は彼女のほうを振り向くと大真面目にこう言った。
[そうかな?自分では見ることができないのに、そんなに謙遜するものではないよ]
彼女はちらりと彼を見てこう答えた。
[だって、私なんかぜんぜん美人じゃないし、魅力なんてない。買いかぶりすぎだよ]
カウンターの端にインテリアの鏡が置いてあった。彼女は鏡をちらりと見やり
[やっぱり私の表情なんてぜんぜん豊かじゃない]
と言って彼に向かって笑って振り向いた。
その瞬間、彼は手元に用意していたカメラのシャッターを切った。
デジタルカメラの画像をその場で彼女に見せた彼はこう言った。
[自分の表情を鏡で見ることができると思っているだろ?でも実際に鏡が映してくれるのは逆さまの画像だよね。実際に自分がどういう風に見えているのか?実は当の本人は見ることができないわけだよ]
[そういえばそうね。鏡の中の私は実は正反対の画像だから、実際に私ではないわけよね]
[昔、鏡を2枚使って遊んだことがなかったか?2枚の鏡の間にあるものは、2枚の鏡のキャッチボールで無限の量があるように見える。だから鏡でなんとか自分の表情をキャッチボールさせてみようと試みたこともあるんだが、結局どちらかの鏡を見ると言うことしかできないから、正面から見た自分の表情は自分には見えないのさ]
[そうか、写真ならばその自分の表情が確認できるわけね]
[そう。でも写真の場合は撮られることを意識するわけだから、自然な表情とはなりえないんだよ]
[ということは・・・?]
彼女はちょっと考えるしぐさを見せて彼にこの会話のエンディングを求めた。

彼はちょっといたずらっぽい表情で彼女にこういった。
[だから、自分のことを自分だけで判断することは危険だということだよ。実際に自分の素顔さえも人間は見ることができない。自分の見たことや感じたことだけではない無限の自分の可能性があるということさ。君の表情はとてもやさしい。その表情を持っているだけでも、君の魅力は周囲から確実に上がるはずだ]
[褒められているのね?うれしい]
[そう。とても褒めているよ。なんとなく包まれるようなやさしさがある。そんな表情を見られることが僕には幸せを感じるけど、その表情が他の人にも見られるのかと思うとちょっと悔しいかな?]
[それってもしかして焼き餅?でも嬉しい。その表情ができるのは、自分ではわからないけどあなたの前でしかできないような気がする。だってあなたの笑顔を見ているととても落ち着くのだから]
気障な言葉をお互いに照れた二人は微笑みながら乾杯した。

人の可能性は無限にある。
もっと自分を知ることが重要。
もしかしたらもっともっと優しい人間になれるかもしれない。
心の扉は自分で開けるものだけど、扉の場所は人に教えてもらおう。
もっと魅力のある自分を引き出せたら、幸せが一歩近づいてくる。
自分の表情、評価してくれる人に出会うことがその第一歩なのかもしれない。

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