Bloody's Tea Room
Team SPIRITS Web Master 「Bloody]の趣味の世界へようこそ

2018/02/18 15:32更新 

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読者の皆さんも喫茶店感覚でお楽しみください

 

〜Story10〜

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マンネリと言う言葉がある。あまりいい言葉ではない。
彼と彼女、お互いに多忙な毎日の彼らは限りある時間の中でしか会うことはできない。
そして限りある時間を有効に使おうとすると、必ず行動パターンは毎回似通ったものになってしまうのも致し方ないのかもしれない。
たまには気分を変えてマンネリを打開したいと思うのは当然のことだろう。
そのためには出かけるのが一番。場所が変われば気分も変わる。二人もそれを望んでいた。

昼間二人が会うというのは久しぶりのことだった。
どうしても仕事の後に会うと時間は夜。夕食を食べるくらいしか時間はない。
久しぶりの昼の外出、二人ともどことなく浮き浮きしていた。そして空は青くすがすがしい。
彼は彼女が車に乗り込むとこう言った。
[今日は行き先を決めさせてもらえるかな?]
[いいわよ。どこへ行くの?]
[実は・・・決めていない。気の向くままかな。]
[こんなにいい天気だからどこか遠くに行きたいな]
彼は無言でうなずいた。

車に乗る時間が長くなると、彼らは無言になった。車の中の空間と言うのは狭く、しかも二人きり。当然のことながらいつも短い時間しか過ごしていない二人にはちょっと長すぎた。
会話がないとどことなく気まずい雰囲気になってしまうのも致し方ない。
そんな時間を打開するように彼が言った
[天気がいいから山のほうに行ってみようか。ちょっと楽しい遊びもしてみよう]
彼女はあまり期待していない顔でうなずいた。

高速道路で1時間、彼は高原に程近いインターチェンジで一般道に下りた。
程なくするとワインディングロードに差し掛かり、彼は彼女に声をかけた
[シートベルトをがっちりお締めください]
彼女はちょっと驚いた顔で彼を振り返り、
[え?何するの?]
とたずねた瞬間、車はワインディングの第1コーナーへと進入した。
限界ぎりぎりの速度で進入したマシンはコーナーの頂点で一気に向きを変え、猛然と脱出した。
次のコーナーにアクセル全開で飛び込んでステアリングを一気に切った彼は、瞬時にアクセルからブレーキに踏み変えて制動をかけ、リアが滑った瞬間に再びアクセルを全開した。
彼はチラッと彼女のほうを盗み見てこう言った
[大丈夫?気分が悪くなったら言ってね]
助手席で彼女はノブにしがみついてGに耐えていた。
[あのね・・・・ちょっとね・・・声が出ないんだけど・・・]
彼はくすっと笑うと次のコーナーに向かってステアを切った。
彼女はハアハア息を切らせて叫んだ
[ねえ、何でこのスピードで曲がるのよ。っていうか信じられない]
[限界だったら言ってね。スピード抑えるから]
[だから限界だってば!]
彼はようやくアクセルを緩めた。
彼女は目を見開いて大きく息を吐いた。
[ちょっと遊んでみたくなった。昔はよく峠を走り回ったからなあ]
彼はのんびりと車を走らせながら彼女に問いかけた
[ジェットコースターより面白いだろ?]
彼女はようやく冷静さを取り戻してうなずいた
[はじめは『何なの?』と思ったわよ!正気じゃない。でも興奮したよ]
[じゃあ、ちょっと興奮を覚まさなきゃね]

彼は峠の頂上に差し掛かるころ車を止めた。
若干興奮気味の彼女は息を吐いて車の外に降り立った。
彼は彼女にこういった
[さっきは驚かせてごめん。でも、空を見上げてごらんよ。気分が良くなるはずだよ]
彼女はそっと空を見上げた。森の中には木の香りが充満し、そして空はどこまでも青く、空気はどこまでも澄んでいた。
[うわ〜〜気持ちいい]
彼女は思わず叫ぶと手を一杯に広げて天を仰いだ。
彼は彼女の後姿を微笑んで見ていた。
[たまには日常から脱出したいだろ?]
[うん。興奮したり落ち着いたり、忙しい一日だけど]
彼女は彼を振り向いて笑った。
[いたずらっ子!]

峠から降りる時に、再び彼は全力でワインディングを攻め込んだ。今回は彼女も驚かなかったが、興奮は再び彼女を包み込んだ。
麓の町に差し掛かかり、先行車に追いついたとき、彼女は思わずつぶやいた
[遅いなあ、前の車]
彼は驚いて彼女のほうを振り向くと、彼女はニヤッと笑って彼を見つめていた。
彼は一言つぶやいた
[いたずらっ子がコピーされちゃったかな?]
彼らは同時に吹き出して顔を見合わせた。

日常生活はマンネリ化するのが当たり前
でも時には時間を作ろう
時間ができたらどこかへ行こう
場所が変わると気分も変わる
知らなかった人の素顔が見える
そして新たな驚きが生まれる
自分の気分も変えることができる
気分をリフレッシュできたかどうかは表情でわかる
もちろんその表情は笑いであふれている

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