Bloody's Tea Room
Team SPIRITS Web Master 「Bloody]の趣味の世界へようこそ

2018/02/18 15:32更新 

当ホームページは[Bloody]の完全なる自己満足の世界で成り立っております。
読者の皆さんも喫茶店感覚でお楽しみください

 

〜Story12〜

Touch

語り合うと言うことは大切だが、言葉で伝えきれないことも世の中には多い。
確かにコミュニケーションとして言葉は重要だ。だが、言葉に頼りすぎると信頼関係は成り立たない場合もある。
恋人同士というのは特にその空間が大切だ。
言葉で伝えるという行為は、会っていないときでも電話や手紙で伝えることが出来る。
しかし、会っているときにだけ心を通わせるそんな仕草が、実は一番コミュニケーションを充実させるはず。
言葉は要らない・・・そんな時を経験したことはないだろうか?

よく晴れた夏の日、彼らは高原にドライブに出た。
空はどこまでも青く、空気はどこまでも澄んでいた。
久しぶりに連休を二人で過ごすこととなった彼らは、なんとなくギクシャクしていた。
[なんか久しぶりだから何を話していいかわからない]
彼女は無言の空間にちょっと戸惑っていた。
彼はちょっと彼女のほうを見やると微笑んでこう言った。
[最近仕事のほうはどうなの?]
[そうねえ、可もなく不可もなく。忙しさの中で時間だけが過ぎてゆく]
[それじゃあ話題作りにはならないよなあ]
[あなたのほうはどうなのよ]
[時間に追われてあっという間]
二人は顔を見合わせて笑った。
[お互いに話題のない寂しい人生だなあ]

しばらくして彼が言った。
[なんかずっと会いたいとか思っていたんだけど、いざ会ってみると何から話を切り出していいものやら]
彼女もうなずきながら答える
[そうね。会ったら話そうと思っていたことは沢山あるはずなんだけど、いざ目の前にしてみるとなかなか出てこない]
[そうなんだよ。僕もいろいろ考えていたことはあるんだ。でも出てこないんだな、これが]
[まあ、時間はたっぷりあるんだし、そのうち思い出すでしょう]
[そうそう、その間はこの景色を楽しまないとね]
彼らは青空と澄んだ空気の中で、窓を全開にしてドライブを楽しんだ。
もちろんその景色の中で見つけた花、緑、水の美しさについて語りながら・・・。

やがて時間が過ぎ、峠の尾根を越えた彼らの前に夕焼け空が姿を現した。
目の前に広がる幻想的な赤い景色に目を奪われた彼は車を路肩に寄せて停車した。
空を見上げていた彼女は小さく叫んだ。
[飛行機雲だ]
地平近くの赤い空間と、まだ青さを保っている空の間に白く一本の筋が一直線に伸びた飛行機雲が彩を添えていた。
その光景はまさに空のキャンパス。子供の頃よく聞いた歌を思い起こさせる。
二人はしばし言葉を失って飛行機雲を眺めていた。
やがて彼はそっと彼女の手を握った。
彼女は彼の手を一度握ると、やがて指先を触れ合わせた。
触れるか触れないかの指先の会話。
何も言葉は語らず、お互いの指先だけが心を映し出す会話をしていた。
そこに手があるということ、指があるということ、それが一番大切なことだと彼らは思った。

会話すること
それはとても大切なこと
言葉で語ること
それもとても大切なこと
顔を見つめること
もっと大切なこと
でも、一番心を通じ合わせるのは触れ合うこと
人の感覚は5つある
もっとも相手を感じるのは何?
目、耳、鼻、口
どれも触れ合うことは出来ない
一緒にいること、それが大切なら
もっと触れ合おう
必ず心が通じるはず

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