Bloody's Tea Room
Team SPIRITS Web Master 「Bloody]の趣味の世界へようこそ

2018/02/18 15:32更新 

当ホームページは[Bloody]の完全なる自己満足の世界で成り立っております。
読者の皆さんも喫茶店感覚でお楽しみください

 

〜Story13〜

Surprise

自分の大切な人の記念日には思いっきりカッコつけてみるのもいい。
しかも計画的に、そして自分もそのドラマの演出を楽しむこと。
そういう思い出の一つ一つが一人の記念日を二人の記念日に変えてくれるものだから。

今日は彼女の誕生日。
私は彼女の誕生日に船の上でのクルージングディナーをプレゼントすることにした。
実は私がその船に一度乗ってみたいと言う願望もあったのであるが、それはあえて彼女には伏せておいた。
なんと言っても自分が楽しまなければ意味がない。
平日の夕刻、もちろん世間一般は仕事の真っ最中。
そんな時間帯に出航するトワイライトクルーズはまさに穴場。
私は二人の記念日を他人に邪魔されたくなかった。
だから一番空いている時間帯を選んでこのプレゼントを実行することにした。

彼女も東京港内のクルージングは初めての体験。もちろん楽しみにしていた。
出航前には二人ではしゃぎながら船をバックに記念撮影し、乗り込む前から気持ちは高ぶっていた。
乗船時間、最上階のラウンジを予約していた私たちは真っ先に放送で呼び出され、船内へと案内された。
ピアノのソロ演奏が流れる広いラウンジに入ると、ひとつだけテーブルにカトラリーセットが用意されており、ウエイターは彼らをその席へと案内した。
[食前酒としてワインをプレゼントさせていただきます]
ウエイターがこの日のラウンジを貸しきったVIPをもてなす。
彼女はこの時点で満面の微笑で私を見ていた。
[最上階を貸し切りなんて・・・夢みたい]
私はその笑顔だけを見ていても幸せだった。そして同時にその後の演出を想像しながらニヤリと笑って言った。
[時間帯が良かっただけだよ。でも、うまくいった]

前菜とステーキのディナーをゆったりとした航海の中で満喫した二人は、ワインの酔いを醒ますためにデッキに出て潮風に当たった。
[気持ちいい!]
彼女はこの時点で大満足だったようだ。風に吹かれながら微笑んでいる彼女を見ている私も大満足だった。
やがてウエイターが彼らのもとに近づいてきて、さりげなく私にコースターを手渡した。
そのコースターをちらりと見た私は彼女に
[ちょっと寒くなってきたから中に入ろうか]
と提案した。
ラウンジに戻った私たちはピアノのソロ演奏に出迎えられた。
その演奏が徐々に曲調が変わり、[Happy Birthday]のテーマに変わったとき、彼女はびっくりした表情をして私を見た。
[え?]
驚きの表情の彼女のもとに、ウエイターがケーキと花束を持って現れ
[おめでとうございます。ケーキと花束をご用意させていただいておりました]
と告げた。
彼女はただただ言葉を失ってこの演出に驚いていた。
ケーキの炎を吹き消した彼女は
[すごい!とても嬉しい!サプライズだよ]
と喜びを表現した。
私はちょっと照れくさくなり、彼女から視線をはずした。
[実はね、さっきウエイターが手渡してくれたこれにこの演出のことが書いてあったんだ。俺もサプライズだったんだよ]
と言って私はコースターを彼女に見せた。
二人は再び目を合わせるとうなづきあって微笑んだ。
[こんなに素晴らしい演出をしてくれるとは思わなかった。でもこのことが一生の思い出になるよね。今日は全てが君のために回っているみたいだ。仕掛け人としてはちょっとカッコいいだろ?]
そして私は心の中でつぶやいていた。
[君が好きだから、君の笑顔が見たいというただそれだけさ]

一人の人がいる
その人の大切な日がある
誰かとその人が出会う
大切な日を共有する
共有するときに大切な人のことをどれだけ思ってあげられるか?
その大きさによって感動が変わってくるはずだ
感動の大きさに比例して
二人の絆が深まる
そして共有された記念日は
一人の記念日から二人の記念日に変わる。
そういう日を一年に何日持てるか?
それが絆の深さではないだろうか?
そのためには
時には思いっきりカッコつけよう

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