Bloody's Tea Room
Team SPIRITS Web Master 「Bloody]の趣味の世界へようこそ

2018/02/18 15:32更新 

当ホームページは[Bloody]の完全なる自己満足の世界で成り立っております。
読者の皆さんも喫茶店感覚でお楽しみください

 

〜Story14〜

Eye Point

視点を変えてみるだけで物事が新鮮に映ることもある。
日常見慣れた光景が、まったく違う表情をして目の前に現れる。
たまには違う視点から見る努力をするべきだ。
そのきっかけは一人で作るよりも二人でつくったほうがいい。
人の視点はみんな違うものだから、自分の知らない気づきを得ることもできる。

[たまには船に乗ろう]
彼は彼女に提案した。
[東京港の景色を海から見てみるのもいいだろう。乗り物好きな俺の趣味で悪いけど」
[いいよ。船に乗る機会なんてなかなかないもんね。今日は天気もいいし気持ちいいかも]

彼らは東京港を2時間かけて周遊するクルージングに乗り込んだ。
久しぶりに船に乗った彼はかなりはしゃいでいた。
[港のあちこちに[F]の文字が点滅しているだろ。あれは[FREE]の略なんだ。東京港の入出港の信号で、今は自由に出入りできますと言う意味だよ。[I]が[IN]、[O]が[OUT]。あの信号で船の入港数や大型船の出入りを管理しているんだよ]
彼は、得意満面で彼女に説明していた。
[港の出入り口の防波堤には必ず左右に赤と白の灯台がある。港に向かって左が白、右が赤なんだ。あれを見て船の位置を遠くから補正して行くんだよ]
彼女は一生懸命に説明する彼の顔を見て微笑んでいた。
[すごい、どこでそういうこと覚えるの?]
[昔、東京港の遊覧船でアルバイトしていたからね。でも興味があったからすぐに覚えちゃった。興味がなければ覚えないよね]
[なんか子供がお母さんに嬉々として報告しているみたいだよ。でも、聞いていて楽しい]
[船の上から見ることなんてほとんどないし、注目もしていないだろ?普段だったら気にも留めないものが、シチュエーションが違うだけでものすごく興味が出たりするもんだよね。なんか雑学ばっかり覚えちゃうんだけど]
彼はちょっと照れたように彼女を見た。
彼女は感性豊かな子供のような彼の素顔を見たような気がした。そして彼をちょっと誇れる気分になった。

海の上にいると方向感覚がわからなくなってくる。
遠くに見える陸地の建物から彼らは船の位置を確認し、左右の景色を楽しんだ。
彼は見えてくる景色を次々に解説し、彼女を飽きさせることはなかった。
埠頭では大型客船は必ず左舷側を埠頭に停泊させること・・・
高速道路の海底トンネルには必ず排気口があること・・・
羽田空港の滑走路は3本あって、風向きによって離着陸の方向を変えること・・・
東京港内では水先案内人による誘導が義務付けられていること・・・
彼女にとってその知識は全てが新鮮だった。
船が2時間のクルージングを終えようとしたとき、彼女は彼にこう尋ねた
[いつも話していることと今日は全然違う話しをしてくれたね]
彼はちょっと考えるとこう答えた。
[こういうシチュエーションだから話せたんだと思うよ。やっぱり話し出すきっかけってあるだろ?船に乗っていつもと違う方向から景色を楽しんで、ゆっくりとその景色について話せる状況だったからね。例えばこれから通過するレインボーブリッジだって、いつもは橋の上から車で通過するだけだよね。でも今日は橋の下から直角に通過するわけだよ。同じものでも見る視点が変わると見る気持ちも変わるよね]
彼女は大きくうなずくとこう言った。
[見るべき視点が変わるということは、考え方に幅が出るかもね。一人ではなかなか思いつかない視点も、二人ならば違う見方も出来る。なんか不思議]
[目で見るものだけでなく、心の中の視点もたまには変えないとね。二人でいるってのは心の目も倍になるって事だよね]
[うーーん。人生の語録に加えようかな?]
いたずらっ子のように彼女は微笑んだ。

人の目は2つ
視点を変えるといっても容易ではない
それならば立つ位置を変えてみよう
もっと違う見方が出来るかもしれない
または誰かの視点に立ってみよう
まったく違う考え方が出来るかもしれない
それは必ず人生にとって厚みが出るはず
自分の知識にも厚みが出る
考え方にも厚みが出る
二人の人が出会ったとき、相手の視点でも考えよう
それが出来ないと永遠に1対1で終わる
1+1は2ではない
もっともっと可能性のある生き方になる
それは心の目をいくつ持てるかということが重要だ

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