Bloody's Tea Room
Team SPIRITS Web Master 「Bloody]の趣味の世界へようこそ

2018/02/18 15:32更新 

当ホームページは[Bloody]の完全なる自己満足の世界で成り立っております。
読者の皆さんも喫茶店感覚でお楽しみください

 

〜Story15〜

With You

要は一緒にいればいい。
二人の人間が出会って、二人で同じ時間を共有し、そしてお互いの心を暖かくする。
別に何か特別なことをやらなくても、真剣な会話がなくても、悩みを相談しあわなくても、時間を共に過ごせればいい。
その時に相手に対して素直な気持ちで接しているなら、その相手を失うべきではない。
そういうひととき、人生の中で感じることってありませんか?

仕事が終わった彼と彼女が出会うとき、いつも外での夕食から始まる。
もちろん二人で行くにふさわしい思い出のレストランやバーを選んで行くのだが、何度も同じ店では飽きてしまう。
二人の出会いもパターン化してしまうと、なんとなく[このままでいいのだろうか?]などと考えてしまうのが恋人同士というものだ。
彼と彼女もお互いに相手を大事に考えているのは間違いない。
ただ、日常に没してしまったとき、ふと思うことがある。
[この人と一緒にいてもいいのだろうか?]

この日、彼と彼女はイタリア料理の店で夕食を取った。
二人とも気に入っているレストランで、お互いの会話も弾み、そして料理もまた彼らを魅了した。
2時間ほどのディナーの後、彼らはなんとなくいつものようにコーヒーを飲むために彼の家へと向かった。
もちろん、彼らがいやいや行動しているわけではない。二人とも夕食後のコーヒーを二人だけで飲むことはいつもの楽しみでもある。
そして、こうやって日常生活を営んでゆくことが、やがてつながる家族という社会形態であることも充分にわかっている。
ただ、今の彼らにとって何か壁のようなもの、そう、打ち崩さなければならない心の壁があるような感じはぬぐえない。

彼の家に向かう道中で、彼女は彼に提案した。
[ちょっとコンビニで買出ししてゆこう]
もちろん彼も賛成した。
彼らはコンビニに入ると、いろいろな商品を見ながら他愛もない会話を楽しみ、デザートと飲み物を買い込んだ。
レジを済ませて店を出る直前、彼女はふと線香花火を目に留めた。
[そういえば花火大会も見てないなあ。今年は]
彼は無言で線香花火を手に取るとレジに向かった。
[家のベランダで線香花火やろう]
彼女は彼の決断の早さにあっけに取られながらも微笑んで彼を見つめていた。

彼の家に到着した二人は早速線香花火を持ってベランダに出た。
小さなアパートのベランダだから、彼らが二人表に出ることは出来ない。
二人はベランダに向けて開放した窓の縁に並んで腰をかけ、蝋燭をつけて準備した。
窓の縁は小さく、彼らが並んで腰を下ろすと完全に体が密着しないと座っていられない。
その距離の近さがなんとなく心地よい感覚を二人にもたらし、心は温かかった。

蝋燭の火に線香花火を近づけた彼女はやがてパチパチと小さな火をともす線香花火に見入った。
風が吹くとあっという間に落ちてしまう火種に注意しながら、彼らはじっとその美しさに見とれていた。
やがて彼は提案した。
[花火の燃えている時間を競おうか!早く火種が落ちたほうが負け!]
子供のようにはしゃぐ彼を見て彼女も楽しかった。
[よーーし、勝負よ]
彼らは線香花火を同時に蝋燭に近づけるとやがて燃え始めた火種をじっと見つめて真剣勝負した。
早く落ちたほうはため息を、残ったほうは歓声を。時間を忘れて少年少女のように一喜一憂していた。
やがて最後の線香花火を終えた時、彼らは顔を見合わせて吹き出した。
[私たち、お子ちゃまみたいだね]
彼も彼女もこの時こう思った。
[いつまでも隣にいて欲しい]
と・・・

同じ時間を過ごす時、
思いついたことを実行しよう
お互いに思いっきり楽しんでしまおう
子供の頃には誰にでもあったこの心
子供たちはいつでも工夫して楽しんでいる。
子供たちはいつも何かを探している。
大人になってもその心を忘れない二人なら、
一緒に居るだけで楽しい時間が過ごせるはずだ
別に何も計画を立てなくてもいい。
二人がそこに居て、お互いに相手と一緒に楽しもうとするだけ
それが心の壁をいつか崩してくれるはずだ
心の壁が崩れたとき、二人は気づくはずだ
一緒に歩いてゆこう・・・と

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