Bloody's Tea Room Team SPIRITS Web Master 「Bloody]の趣味の世界へようこそ 2018/02/18 15:32更新
当ホームページは[Bloody]の完全なる自己満足の世界で成り立っております。 読者の皆さんも喫茶店感覚でお楽しみください。
〜Story18〜
Magic
寂しさを感じたり、孤独感を感じたりするときに欲しいのは[理解者]かもしれない。 自分の気持ちをたった一人でもいいからわかって欲しい。 すがるような気持ちになったときに、無条件で支えてくれる人が欲しくなる。 本当に支えてくれる人と出会ったとき、そう感じたとき、愛情が生まれるのかもしれない。 彼女の心はぽっかりと穴が開いているようだった。 仕事をしていても、ショッピングをしていても、家でゆっくりしていても、心が休まることはなかった。 何かをやるのは何かを忘れるため。 何かやりたくてやっているわけではなく、何もやることがないと辛いから動いているだけだ。 そう、長年付き合ってきた彼との別れは彼女の心の中に空洞を生み出してしまった。 彼女はこの日、親しい友人である別の男性と食事をすることになっていた。 仕事を終え、彼との待ち合わせ場所に向かう彼女の足取りはどことなく重かった。 その男性と会いたくないわけではなく、ただ心にゆとりがなかったから。 待ち合わせ場所に行ってみると、彼はすでに到着していた。 いつものように明るく、[どこの店に行こうか?]と聞かれたとき、彼女は[どこでもいい]とそっけなく答えてしまった。 彼はちょっと怪訝な顔をしたが、やがて笑顔を取り戻して一軒の居酒屋に案内した。 居酒屋の店内は喧騒が漂い、彼女にとってはありがたかった。 静かな雰囲気で隣にまで声が聞こえてしまう状態だと、彼女の本音は話せない。 彼は彼女の心境を知ってか知らずか、一つの包みを取り出してこういった。 [これ、プレゼント。元気が出るための言葉を100個書いてある本だよ。自分が落ち込んだときに買ったんだけど、読み終わったから上げるね] 彼女はちょっとびっくりした顔で本を受け取った。 ぱらぱらとめくると、人を元気付けるような言葉が並んでいる。 [私が落ち込んでいることをわかっていてこれをくれたの?] 「う〜ん、落ち込んでいると言うか、元気ないだろうなという感じがした] 彼女はその言葉を聞いて堰を切ったように最近の出来事について彼に語った。 彼はただ頷きながら彼女の話を最後まで聞いた。 やがて彼女が話し終えたとき、彼はゆっくりと顔を上げて彼女の目を見た。 [それで、僕に何を求めているのかな?] 彼女は今まで黙っていたことを語り終えて若干興奮していた。 [別に何も求めていない。ただ聞いて欲しかった] 彼はゆっくり首を振ってこう言った。 [聞いてもらうだけでいいなら、同性の友人でもいいはずだよ] 彼女はちょっと冷静さを取り戻し [あなたにはいつも私の味方でいて欲しいと思う。そういうアドバイスを求めているのかも知れない] 彼はいたずらっぽく笑うと [さっき上げた本、出してごらん。その最終ページを見てくれないか?] 彼女はちょっと怪訝な顔をして本を取り出した。 最終ページには手書きでこう書いてあった。 101:わたしはどんなことがあってもあなたの味方です 彼女は文面を見ながら頬を濡らした。 ただただ彼の心の暖かさを感じていた。 [どうして?いつ書いたの?] [なんとなく、今日会うときに君にこう言いたかった。言葉でいうと陳腐だからこういう形にしてみた] [これって魔法だよ。あなたはマジシャン?] [そう、君の心を読み取ることが出来るとすればマジシャンかもしれないね] 彼女はこの瞬間、これからの未来を彼と歩いていこうと誓った。 一人で生きてゆくことは出来ないことはない でも心の支えがいらない人間はいない 誰でもいいというわけではない お互いの心をしっかりと汲んであげること いつも相手を考えること そうすることで相手の心が見えてくる 相手の苦しさ、悲しさ、喜び、やさしさが見えてくる 相手の心が読めるようになったら愛は本物 魔法使いにだってなることが出来る そんな人と過ごすことを幸せという
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