Bloody's Tea Room
Team SPIRITS Web Master 「Bloody]の趣味の世界へようこそ

2018/02/18 15:32更新 

当ホームページは[Bloody]の完全なる自己満足の世界で成り立っております。
読者の皆さんも喫茶店感覚でお楽しみください

 

〜Story9〜

Alone

周囲の喧騒がふと静まって、何も音が聞こえなくなる時ってありませんか?
自分を取り巻く空間が一瞬止まって見えることってありませんか?
そんな時、あなたは孤独を感じますか?または自由?
自分のいるその空間を大切にしていますか?
そんな時間があなたにはありますか?

彼はいつものようにその扉を開けた。入口に配されたベルが、彼の到来を店内に告げる。
彼はまっすぐにカウンターのスツールへと進んでいった。
金曜日、午後8時。
夜の街が一番輝き始める頃、店内もまた喧騒に包まれ、仕事を忘れて週末の時間へモードを切り替える人々が、その時間を楽しんでいた。

周囲の喧騒をよそに彼はいう。
「いつもの」
グラスを傾けながら彼は周囲の喧騒を楽しみ、その喧騒の空間に[静]として溶け込んでいた。
それからかなり長い間、彼はオーダーする以外には一言も発さず、孤独の時間を楽しんだ。
それは決して[寂しさ]や[悲しさ]といった負の表現ではなく、その証拠に彼の口元には微笑が絶えなかった。
やがて夜が更け、周囲の喧騒がだんだん消えて行き、人々が家庭に帰り始める頃、バーテンが言った。
「すみません、おかまいもできませんでした」
「自分の周りだけが隔離された空間というのも楽しい」
「なぜ、一人を好まれるのですか?」
「別に好んでいるわけではない。みんなと飲むことも僕には楽しいよ。ただ一日にちょっとだけ、自分の生活の臍みたいな、そんな時間が欲しいだけさ」
「自宅ではダメなんでしょうか?」
「自宅だと生活感が出てしまう。街の喧騒や自然の営み、生きている空間の中で自分を隔離してしまうというのは、心を落ち着けるのにすごくいい」
「あなたにとってこの時間は『リラクゼーション』なのですね?」
「まあ、そんなものかな」

二人の会話が終わり、ふと周囲を見渡すと、先ほどまでの喧騒が嘘のように静まり、BGMだけが響く店内に、客は彼一人しかいなくなっていた。
「貸切です」
バーテンの言葉に彼はうなずきこう言った。
「ワイルドターキーをストレートで」
すばやくショットグラスを手にしたバーテンの手先を見つめて彼はまた微笑んだ。

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