Bloody's Tea Room
Team SPIRITS Web Master 「Bloody]の趣味の世界へようこそ

2018/02/18 15:32更新 

当ホームページは[Bloody]の完全なる自己満足の世界で成り立っております。
読者の皆さんも喫茶店感覚でお楽しみください

 

〜Story6〜

Ticket

メールが来た!しかも社内一の美女と呼ばれる秘書室の大塚あかねから!別に大塚あかねとは今までも何度もメールは交わしている。役員に直接報告することも多い私は、秘書室の大塚あかねに役員スケジュールを空けてもらったり何かとお願いすることも多い。でも、今回のメールは違う!

「上野課長様
役員秘書室の大塚です。

今度池袋で開催されるロートレック展のチケットが2枚あるんです。
上野課長、ロートレックお好きでしたよね?
よろしければ行きませんか?せっかくの機会ですし。
申し訳ありませんが、私はこれから外出なので、定時後に秘書室で。

大塚」

来た!離婚して7年!私にも春が来た!
ロートレックは私の好きなフランスのポスター画家。彼女はそのことを知っていたんだなあ。でも何で知っていたんだろ?まあ、そんなことはいい。
「課長?課長?」
ニヤニヤしながらPCから目を上げると大崎女史の姿が目の前に飛び込んできた。
「何をニヤニヤしているんですか?」
「いや、べつに・・・」
「なんかいいことあったんでしょ。もしかして社内ラブレターとか?」
げげ、女って鋭い!
「んなわけねえじゃん。バツイチ独身中年男性にそんなことはおきねえべ。」
「なんか隠してる。絶対に隠してる。課長は嘘つくときにはなぜか東北弁っぽいしゃべり方になるんですよ。知りませんでした?」
千里眼かよ〜
「そんなことどうでもいいべ。ところで大塚君、何か?」
「今日の夜、飲み会やろうって話が出ているんですよ。例の打ち上げです。課長も来ますよね。」
うわ、よりもよって今日かよ〜。しかも私は「飲み会に欠席したことがない」という記録を更新中だ。
「う〜ん、ちょっと今日は・・・」
「あ、デートですか?」
やっぱり大崎女史にはステルスさえも見抜くレーダーがあるに違いない。
「違うべ〜。まあ、急な話なんでちょっとね、約束が・・・」
「そうですか。連続飲み会参加記録もここで途切れてしまうんですね。残念ですが仕方ないですね。あ、ちなみに私は大塚ではなくて大崎ですから。」
上野東気、人生最大のミスだったかもしれぬ・・・

その日は何をやっても上の空で全然仕事が手に着かなかった。罪な人だよ、大塚君!
結局なんだかんだ時間をつぶすような一日を送った私は、定時後に飲み会に出かけてゆく課員たちを見送った。
「お疲れ様です。あれ?課長、今日は行かないんですか?」
渋谷君が意外そうな顔をして私に声をかけた。
「うん、ちょっと先約があってね。みんなで楽しんできて。」
遊び人のお前には大塚君は目もくれないだろうがね。ふっふっふっ。
「連続記録が途絶えましたね〜。次は僕が記録を伸ばしますよ。」
お前は合コンがあれば課の飲み会なんか平気ですっぽかすくせに。
「そうだな〜若いやつにはかなわないよ、もう」
と、言っておこう。
ようやく課員が全員出て行ったところで、私は秘書室に急いで向かった。かなり待たせてしまったかもしれない。
「やあ、大塚さん、お疲れ。待たせてごめんね。お誘いいただいてありがとう。」
「大塚君」ではなく「大塚さん」と呼んだところに気持ちを込めてみた。秘書室にはもう誰も残っていない。
「上野課長、すみません。わざわざお越しいただいて。」
彼女はいつもながらサラサラのロングヘアーからいい香りを漂わせていた。
「だって嬉しいじゃないか。君から連絡貰うなんてさ。」
「すみません。常務がぜひ上野課長にというものですから。」
ん?なんか変?
「常務?」
「はい、先日上野課長が乗務と一緒に出張されましたよね。その時にロートレックの話で盛り上がったとか。」
そうだった!ロートレックのことを話したのは常務に対してだった。
「それで常務がぜひ一緒にロートレック展に行きたいということで、上野課長の分もチケットを手配されたんですよ。」
あ・・・
「どうされました?」
彼女・・・いや、大塚君の顔がどんどん遠くなって行くような・・・
「ああ、常務がね〜。はいはい。常務もロートレックがお好きだって言ってましたから。」
私は大塚君が好き。常務よりもロートレックよりも。
「常務のご予定からすると来週の水曜日の夜あたりがいいそうです。」
「あ、はいはい。空けときます。」
「では、水曜日の定時後ということでよろしくお願いします。あ、これ、チケットです。上野課長に2枚お渡ししておきます。ではお先に失礼します。」
「あ、大塚さ・・君、今日何か予定ある?」
「はい、今日は秘書室の飲み会なんです。すみません、待たせているのでこれで。」
残り香が空しいってこういうことなんだな・・・
そういえばメールに「ご一緒に」とは書いてなかった。
・・・日本語って難しい・・・
 

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