Bloody's Tea Room
Team SPIRITS Web Master 「Bloody]の趣味の世界へようこそ

2018/02/18 15:32更新 

当ホームページは[Bloody]の完全なる自己満足の世界で成り立っております。
読者の皆さんも喫茶店感覚でお楽しみください

 

〜Story7〜

Response

「今季の課のスローガンを発表します」
私は4月1日の朝礼では毎年簡単な一言の言葉を発表するようにしている。難しいスローガンを掲げても全然頭に残らないから、超簡単な一言だけ。それを自分の席の後ろの壁に大きく書いて貼っておく。この言葉に反するのはダメだよと言う話だ。
「今季のスローガンは『スピード』にする。最近はメールなどであちこちから情報が入ってくるが、それを放置してしまうとどんどん傷口が広がる。我々の仕事は『とにかく早く問題を解決すること』だと思う。だから外部からの問い合わせに対しては最低でもその日のうちに何らかの返答をするということを心がけてほしい。」
く〜ぅ〜!私っていいこと言う!
「でも、難しい質問とかが来たらどうするんですか?」
渋谷君、いい質問だ。
「渋谷、そういうときでも返事を返すんだ。例えば『難しいのであと何日下さい』とかな。」
これ以上ないという優等生的お答えを巣鴨係長が返す。チームワーク抜群じゃない。
「そうだ、渋谷君。まずは相手に『ちゃんと見てますよ。動いてますよ』と見せることが重要なんだ。それによって相手が安心するからね。」
「でも、『あと何日』が守れない場合もありますよね?」
渋谷、お前はそんなこと言ってるから遊び人のくせに特定の彼女が出来ねえんだよ。
「その時は追ってまた期限延長の連絡をすればいいだろ。要は相手に対してより早く、より信頼できる回答をきちんと出すことが重要なんだ。」
わかったか?遊び人!
「はあ、何となくわかりました。要は回答は早ければ早いほどいいし、精度が悪い回答でも相手に『こちらは動いてます』っていうことが伝わればいいんですね。」
そうそう。
「俺が新入社員の時に、当時の課長から『品管は工場の営業だ』と言われたことがあるんだ。つまりお客さんが最も求めていることは何か?と言うことを優先して仕事しろってことだ。その時俺は、仕事の中身の精度は全然レベルが低いから、とにかく『早く対応する』を実践することにした。電話が来てから1次回答まで15分と決めた。その結果、X自動車から『あなたにまず話せば誰かが動いてくれる』と言われたことがあったよ。これが信頼というものだと思う。」
決まったぜ!
「わかりました!頑張ります。」
よしよし。

その日の午前中は会議だらけで席に戻ることが出来なかった。社食で昼を食べてから席に戻ると既に午後の就業時間に突入していた。私が席に戻るなり大崎女史がやってきた。待っていたかのように・・・。こういう時にはろくなことがない。
「課長!」
氷の女が冷たい目で見ている。
「何?何かあったの?」
「渋谷さんを見てください。」
ん?渋谷渋谷・・・。なんだか携帯をいじくっているな。
「渋谷がどうかしたのかい?」
「午前中からずっとあんな感じです。仕事、多分してないと思います。」
氷の女が自分で注意しないのは原因が私にあるからだ。普段なら「ちょっと!」くらいの文句は本人に言うはずだ。
「わかった。聞いてみる。」
私は席を立って渋谷君の後ろに回った。やたら連発でメールを送っている。
「渋谷君、何しているの?」
なるべくフレンドリーに優しく話しかけてみた。
「メールに返信しているんですが、次々とメールが来ちゃって・・・。」
と言いながらも渋谷の目は画面にくぎ付け。指はタッチキーの上をするすると動いている。
「そうじゃなくってさ、『誰と』メールしているのか?って聞いているんだ。」
仕事の相手か?
「ああ、メル友っす。メールが来たら15分以内に返すって心がけようと思って。」
お前…馬鹿だっけ?
「何で?」
「いや、今朝の課長の話聞いていたら、何で俺はあまり信頼されないんだろうという理由がわかった気がするんですよ。そうかあ、早いレスポンスで返答をすれば、相手から『大事にされている』って信頼されるんですよね。いやあ、勉強になりました。これで俺にも彼女ができるかもしれません。スピードって大事ですよね〜。」
私はお前の頭を今すぐに開頭してみたい衝動に激しく駆られている・・・。
「あのな、スピードってのは仕事の話だ!仕事中にそんなにガンガンレスポンスしている奴なんかどこの女が信頼するんだ?」
渋谷は初めて手を止めて私のほうに向きなおった。
「だって課長、いつも仕事もプライベートも両方大切にしない奴はダメだって言ってるじゃないですか。」
視線の片隅で大崎女史が噴き出しそうな顔で盗み見ている。
「お前の場合は『仕事も』が抜けているんだ、アホンダラ!」
・・・お前みたいに仕事を軽量化できる奴が俺はうらやましいよ、渋谷・・・

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