Bloody's Tea Room
Team SPIRITS Web Master 「Bloody]の趣味の世界へようこそ

2018/02/18 15:32更新 

当ホームページは[Bloody]の完全なる自己満足の世界で成り立っております。
読者の皆さんも喫茶店感覚でお楽しみください

 

〜Story13〜

Any Questions

「だめじゃないか。わからないことがあったらちゃんと解るまで聞いてこなくちゃ」
代々木君は仕事もできるし、どんな仕事も嫌がらずにやるのだが、どうも詰めが甘い。
「解析している時に設計の人も一緒だったんだろ?ならばなんでこういう動作になるのか教えてくれただろ?」
「はい。説明されたんですが、どうも私の理解力が足りないみたいで・・・。」
蚊の鳴くような声で代々木君が答えている。これ以上前に立たせていると叱責しているみたいでいやな感じだ。
「とにかく何でこんな動きをするのか設計の人に動作について説明してもらって、自分が理解できるまで聞きまくりなさい。新人のうちはどんな質問してもばかにされないから今のうちだぞ。」
代々木君は小さな声で「はい」と答えるとフロアから出て行った。

間もなく定時となる16時半、私のデスクの電話が鳴った。
「はい、上野です。ああ、田端さん。」
相手は設計の田端課長だ。
「上野さん、おたくの代々木君がうちに来ているんだけど、なんだか変な感じでね。ずっとうちの技術者と話し込んでいるんだ。話を聞くと今回のトラブルの原因について勉強しようとしているんだが、もう4時間になるんだよ。」
「すみません。確かに代々木君には分からないことがあったら解るまで聞いて来いと指示したのですが、あまりにも長すぎますね。ちょっとそっち行きます。」
電話を切った私は田端課長の技術10課へと向かった。フロアに入ってみると、ミーティングテーブルで何人かが集まって打ち合わせをしていた。その中に代々木君もいる。
「ああ、上野さん、すみませんねわざわざ。」
「いえいえ。こちらこそご迷惑をおかけして・・・。代々木君どうしたの?」
「あ、課長!実はいろいろ教えてもらっていたんですがなんとも理解できないんですよ。それで皆さんに説明してもらってまして・・・。」
よくよく話を聞くとある部品の寸法が外れていたために動作阻害を起こしているだけなのだが、動作阻害するかしないかのギリギリの線で設計地が決まっていることにこだわっているらしい。なかなかいい着眼点じゃないか!
「なるほど、こういう設定値だと規格内でも動作がおかしくなるかもしれないと君は考えているんだね?だからこだわって設定値について質問しているのか。」
私は代々木君を誉めながら集まっている設計メンバーに向かって言った。
「これ、部品規格を変えないと今後も同じトラブルが起こるよね?」
しかし設計メンバーはきょとんとしている。
「上野課長、それはその通りなんですが・・・」
「ん?何か他にも問題が?」
「代々木君、そこにこだわっている以前の問題らしいんです。」
どういうことだ?代々木君?
「課長、僕には・・・わからないところが何なのかがわかりません」
・・・そ、そうなの?・・・
「もう一度出直そう」
私は代々木君を促すと頭を下げて設計フロアを後にした。
・・・せめて動作原理くらいは勉強してから聞きに行こうな、代々木君・・・

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