Bloody's Tea Room
Team SPIRITS Web Master 「Bloody]の趣味の世界へようこそ

2018/02/18 15:32更新 

当ホームページは[Bloody]の完全なる自己満足の世界で成り立っております。
読者の皆さんも喫茶店感覚でお楽しみください

 

〜Story1〜

ただ、空が青いから

僕は梅雨が嫌いだ。何とも言えないじめじめした空気と、まとわりつくような湿気。どんよりとした空と、音もなく降る雨。朝、目覚めた時にカーテンを開けた瞬間に何をする気もなくなってしまう。

そんな梅雨の
空を想像してベッドから重い腰を上げる。遮光カーテンによって外界とは遮断された僕の部屋では外の様子は伺い知れない。
カーテンを開けるのがおっくうで、僕はまずコーヒーを入れた。コーヒーメーカーに豆をセットし、スイッチを入れる。コーヒーが完成するまでの間に歯を磨く。ごくごく普通の一日の始まりだ。
歯を磨き、洗顔をしたころにはコーヒーは出来上がっている。FMラジオのスイッチを入れ、コーヒーをデミカップに注ぐ。FMラジオからは軽快な音楽が流れている。
コーヒーを飲み終わる頃、FMでは天気予報が始まる。どうやらはるか南の海上に台風が発生したようだ。その影響で梅雨前線が押し上げられるのだという。
「梅雨の谷間」という言葉が耳に止まった僕は、慌てて遮光カーテンを開けた。梅雨時期が嘘のように晴れ渡った青空、新緑が前日の雨を吸ってまぶしい。
そんな景色の中にいる僕のクルマは連日の雨で薄汚れている。なんだかかわいそうに思った僕はふと洗車をしたくなった。幸い仕事は一段落している。今日は仕事を休んでも影響はないだろう。
「仕事を休む」と決めた僕はとてもうれしくなった。何事でも日常から離れるということはワクワクするものなのかもしれない。会社の就業開始時間まで2杯目のコーヒーをゆっくり味わった僕は、「休む」と伝えるために会社に電話を入れ、洗車に取り掛かった。
たっぷり1時間かけて洗車した僕のクルマは久しぶりの陽光を受けて嬉しそうに見えた。「どこかに行きたい」と訴えかけている。
汗だくになってしまった僕はシャワーを浴び、ゆっくりと支度した。スーツパンツではなくジーンズ、ワイシャツではなくTシャツ、革靴ではなくスニーカー。

エンジンをかけて当てもなく走り始める。こういう日はクーラーを入れずに自然の風を浴びながら走るのがいい。4つの窓を全開にして走ると街中から郊外へ向かって走る国道の様子を香りで感じることができる。アスファルトの匂い、排気ガスの匂いから、緑の香り、水の香りへ。
街を出るためには必ず通ることになる橋を渡り、川を越えると景色は一変する。一面に広がる緑と空の青さがまぶしい。
僕はステアリングを切り、緑の中にクルマを乗り入れた。一気に喧騒がなくなり、時が止まったような錯覚を覚える。
緑の真ん中でクルマを止め、ドアノブを引いて外に出てみる。見上げると一面の青空の中をゆっくりと雲が流れていた。そこだけが時の流れを主張するかのように。そう、時は流れている。でもこんな日があったほうが人生は楽しい。
この時間を過ごすことができた僕は幸せ者だ。そのきっかけをくれたのは・・・そう、ただ空が青いから。

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