Bloody's Tea Room
Team SPIRITS Web Master 「Bloody]の趣味の世界へようこそ

2018/02/18 15:32更新 

当ホームページは[Bloody]の完全なる自己満足の世界で成り立っております。
読者の皆さんも喫茶店感覚でお楽しみください

 

〜Story1〜

No Reserved

「かんぱ〜い!」
名古屋駅で新幹線に飛び乗った私たちは、なんとか隣り合わせの席を確保した。ホームの売店でロング缶2本とポテトチップを買うのは絶対に忘れない。出張帰りは新幹線車内でビールというのはお決まりだ。
「新橋君、今日はお疲れ。説明上手かったぞ。なんと言っても裏付けがしっかりできていたのが勝因だな。」
新橋君は私と一緒に出張するのは未だに緊張するらしい。事実、表情は硬く、ビールを持つ手にも力が入っている。
「いえ。課長が一緒に来てくれなかったら自分一人じゃあヤバかったです。特に再現実験の説明で突っ込まれた時はどうしようと思いました。」
「あんなのは慣れだよ、慣れ。大体突っ込んでくるところなんか決まってるんだから。」
「でも、課長の説明、半分作り話ですよね?」
おいおい、そんなにストレートに言うなよ!新幹線の中にX社の社員がいないとも限らないんだぞ。私はそれでもクールにこう言い切った。
「事実があって、大半の裏付けが出来ていて、最後のパセリをクレソンに変えたくらいのもんだろ?あの程度でいいのさ。」
早くも1本のビールを飲み干した私は、2本目のプルトップに手を掛けた。遠慮しているのか?新橋君はポテトチップに手を伸ばしていない。
「ほら、ポテトチップ食うか?」
「でも・・・いいんでしょうか?最後の最後は再現実験に成功していないと思われてもおかしくないんじゃ・・・」
おいおい、ポテトチップ食えよ。
「いいの。いつも100%裏が取れるわけじゃないから95%で手を打つ場合もあるさ。その辺も先方はわかってる。だからあえて俺の作り話に乗ってくれたんだよ。」
「え?つまり先方もわかってた?」
「そう、そういう信頼関係を今まで築いてきたんじゃないか。信用しろよ。真面目過ぎると身が持たないぞ。」
私、結構「いい上司」してるかも。
「はあ・・・。真面目過ぎますか・・・。」
「そう、新橋君は真面目過ぎ!過ぎたるは及ばざるがごとしってね。残りの5%を突き止めようとして今日の納期に間に合わないほうがよっぽどヤバかったぞ。」
決まった!
「わかりました。気を付けます。」
「いやいや、そうじゃなくってさ。あまり真剣に考えすぎるなってことだよ。ほら、飲め!」
私たちは結局さらに1本づつビールを車内販売で買い足し、今日の仕事の成果を祝福した。 もちろん飲み干した後は東京駅まで爆睡していたことは言うまでもない。そしてその時、新橋君がテーブルにノートパソコンを広げて出張旅費精算しているとは・・・私の記憶にあるわけがない。

「あの〜」
出張から帰った翌日、庶務の大崎女史が私の机にやってきた。
「ん?何かありましたか?」
顔を上げて彼女を見ると、なんだか目つきが怖い。課内で「氷の女」と呼ばれるこの目。嫌な予感がする。
「昨日の出張、帰りの新幹線って指定席お使いになりました?」
嫌な予感は増殖してきた。
「う・・うん。使ったけど・・・」
「のぞみ号の指定席をお使いになったんですよね?」
「う・・・・うん、それが何か?」
「新橋君と一緒にお帰りになりましたよね?新橋君は課長とじっくり話せてよかったって朝言ってましたよ。」
嫌な予感は最高潮に達していた。
「うん。」
「おかしいですねえ。新橋君はひかり号の自由席の料金精算しているんですよね。なぜですか?」
嫌な予感の爆発の瞬間を私は見た!確かに見た!
わが社ではのぞみ号の指定席利用が認められている。もちろん「使った場合は」だ。昨日は確かにひかり号の自由席を使ったが、私は当然のごとくのぞみ号の指定席料金を請求して いる。言い逃れ・・・無理に決まってる。
「あ・・・いつもの癖で、つい・・・」
大崎女史の顔はどんどん冷やかになってゆく。私の顔も凍ってきた気がする。
「修正して再提出しま〜す。」
・・・だから真面目過ぎるのは罪だっていうんだよ・・・

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